フランス南西部にあるToulouse(トゥールーズ)から、電車で約1時間。7月~8月の間は、そんな農地が広がる場所で野菜農家さん(VincentとNathaly)にお世話になっていました。
名前は「La Ferme de l'Ecureuil」、日本語にすると「リスの農家さん」です。
なぜリスなのかというと、こじんまりとした小さな農家で、たくさんのヘーゼルナッツとリスがいるから、なのだそう(でも、滞在中リスの姿を見ることは叶いませんでした!リスはものすごく俊敏なのです…)。
地図で見ると、この辺。
トゥールーズはフランスの中ではかなり南で、どちらかというとスペインに近い。北緯43度で、日本で言うと盛岡と同じくらいの緯度にあるのですが、海洋性気候・地中海性気候・大陸性気候の影響により、夏はカラッとした日が続きます。
私がいた期間は、基本的に30~40度くらいの気温が続き、乾燥していて、ジリジリと焼けるような暑さでした。
そのため、午後は到底外で作業ができるような環境ではなく、朝の7時からお昼の12時まで、1日5時間の農作業が基本でした(ちなみに、wwoof franceでは、前もって同意の場合を除いて、1週間に25時間以上の仕事をしてはいけないことになっています)。
(こちらは麦畑。7月に収穫するちょっと前の写真です)
扱っていたものはこちら。
〈野菜〉じゃがいも、なす、いんげん、ほうれん草、ねぎ、ピーマン、かぶ、人参、砂糖人参、ズッキーニ、ラディッシュ、玉ねぎ、かぼちゃ、サラダ菜、きゅうり、ビーツ、きゃべつ、トマト、セロリ、パセリ、ブレット
〈果物〉さくらんぼ、桃、ほおずき、いちじく、フランボワーズ、いちご、プラム、りんご、梨、あんず、柿、カシス、木苺、すぐり、マルメロ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、胡桃
〈穀物〉菜種、麻、ひまわり(の種)、粟、麦、petit epeautre(麦の一種)
〈その他〉ジャム、野菜ペースト、ジュース、パン、クッキー、ケーキ、タルト等
基本的には、1週間はこのようなスケジュールでした。
月:農作業
火:農作業
水:農作業or果物の収穫、配達の準備
木:パンを作る日(その後配達)
金:土曜日のマルシェの準備
土:Moissacにてマルシェ(フリー)
日:フリー
せっかくなので、一wwooferとして私はどんなことをしていたのか、そして農家さんがどんなことをしているのかを書いてみます。
※iphoneで撮っていた写真のデータをすべて失ってしまったので、あまりいい写真がありません。非常に悔しいですが…!
●流通の方法
まずは、どうやって生産物を流通させているのかということについて。これに関しては大きく4つの方法があります。
①毎週土曜日に近くの町:Moissac(モワサック)で行われるマルシェ
②15日ごとに配達するAMAPにて
③BIO coopなどのお店への配達
④個人での注文
①マルシェ
フランスでは、マルシェの文化があります。これは、週に1度(もしくは2度)、地域ぐるみで行われる、生産者から直接品物を買うことができる青空市場のことです。フランス人のwwooferに聞いたのですが、フランス人はとにかくマルシェが好きです。毎週そのマルシェで生産者と話をして買い物をし、友人と会って、雰囲気を楽しみます。スーパーはもちろんあるのですが、より新鮮で、より確かな質で、親しみやすいのがマルシェ。もし食材を食べきってしまった時は、次のマルシェまでに足りない分だけをスーパーで買い足すのだそうです。
ということで、ナタリー(ホストマザー)たちが出店しているMoissacという町は、あのサンティアゴ・コンポステラへの巡礼の道の一つでもあり、非常に開かれている場所です。観光客も多く、地域の人以外にもたくさんの方が訪れます。
このマルシェで、季節の野菜や、木曜日に制作したパン・お菓子などを販売します。お客さんは8割が地域の方やナタリーの友人・知人、残り2割ほどが観光客です。ここで売れ残った野菜は、wwooferたちの次のマルシェまでの生きる糧になります。
②AMAP
以前ちらりと書きましたが、フランス各地にある農家さん支援の形がAMAP(アマップ)です。具体的には、ヴァンサン(ホストファザー)は2つのAMAPに加入しており、月二回、水曜日(15日ごと)に配達をしています。彼が加入しているAMAPは果物のみを取り扱っており、旬の果物を詰めたセットを決められた場所で消費者に届けています。消費者は、6ヶ月分の料金を前払いしています。
これによって生活が非常に変わった、とナタリーは話していました。実は一昨年までは加入していなかったそうですが、果物は時期も偏りがあり、マルシェだけですべて売り切るのは現実的ではなかったそう。スーパーへの配達、という方法もあるのですが、スーパー側は「なるべく青いものを(日持ちするため)」という希望があり、「なるべく美味しい状態のものを」と思っていたナタリー達にとっては、その日の朝に収穫して配達することができるAMAPは理想的だったのです。これによって、収入も安定し、果物をあまり腐らせることなく流通させることができています。
③BIO coopへの配達
毎週木曜にパンを作るのですが、そのできたてパンと野菜を、BIO製品を扱うスーパーに配達しています。BIO coopでは、生産者の名前と、そのお店からどれくらいの位置にある農家なのかを明記しています。
④個人での注文
インターネットや、マルシェを通して、野菜や果物の注文をすることができます。明確な数はわかりませんでしたが、週に1度個人への配達もしている様子。
●WWOOFerは何をするのか?
これはさまざまでした。決まっているものとしては、AMAPの配達がある水曜日には、その時その時旬の果物を収穫していました(あんず、りんご、桃、カシス、プラム、梨、木苺、アーモンド等)。また、木曜日はマルシェに向けてのクッキーやケーキ作りと、パン作り。金曜日はマルシェで販売する野菜を収穫したり、花を収穫したり(ナタリーが花束を作っているため)、採ってきた野菜を束にしたり、という内容でした。
(これはパン作りの様子。酵母によって生地が大きく膨らみ、手で触るとすごい弾力があります)
そのほかの日、つまり月~水(AMAPのない日)はこのような内容↓。
・雑草取り(一番多かった作業。5時間ぶっ続けとかもありました)
・苗を植える、植え替えをする
・手入れ(病気の葉を取ったり、害虫を取ったり)
・ヘーゼルナッツのネット張り(収穫時期になると実が落ちるのですが、それをネットで拾い吸引して収穫するため)
・じゃがいもと玉ねぎ掘り
・野菜や果物の収穫
一番多かったのはやはり雑草取り。とにかく延々と雑草取りが続いた週もあり、みんなの反応も「またか!苦笑」という感じでしたね。慣れると、腰を痛めない体勢を各々が開発し出します。
私たちはお昼で仕事を終えていましたが、ヴァンサンは言葉通り朝から晩まで働いていました。一体どこにそんなエネルギーがあるの?と最初は思いましたが、彼にとって農作業が彼のエネルギーなのです。一人で黙々と体を動かし続けることが、彼にとっては楽しい(というわけでもないけれど)というか、わくわくすることのようでした。
彼らがWWOOFerの受け入れを始めたのが2015年の春。それまでは、農家見習いの方がいたそうですが、それも一人や二人という少人数。雑草取りなんて永遠に終わりが見えなかったことでしょう(7人がかりで何日もかけているくらいだから)。
まだまだ私は知らないことばかりですが、1週間だけでも過ごしてみれば、いかに手のかかる作業が多いのかが感じられます。パッとできるようなことばかりじゃないんですね。BIO製品の野菜が高い理由もこういうわけか、と納得します。じゃあどうしたらいいんだろう、ということを考えていきたいです。
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